壁を這うようにして葉を茂らせている植物・蔦(つた)。「蔦」という名前は、「地面を伝って伸びる」という性質からついたと言われています。「葵紋」で有名な徳川家も、8代将軍吉宗から使用するようになったとか。日本10大家紋と言われるほど使用者が多く、500以上にものぼるデザインがある「蔦紋」について学んでみましょう。
目次
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蔦紋とは?意味・由来を解説
読み方 | もっこうもん |
家紋の分類 | 植物紋 |
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蔦はブドウ科のつる性落葉木で、十大家紋の一つでもあります。蔦の文様は、平安時代から絵巻物や調度品に多く用いられるようになり、優美な姿と繁殖力が強いことから家紋として人気が出ます。 蔦はつるが特徴的な植物ですが、蔦紋は葉の部分が描かれることが多く、丸に蔦、鬼蔦、結び蔦、割り蔦、丸に三つ鬼蔦、菱に覗く蔦などバリエーションが豊富です。 使用地域は石川県新潟県、富山県などの北陸地方に多く、八代将軍吉宗が好んだ家紋として有名です。他には松平松井氏、松平大給氏、松永久秀、藤堂氏、椎名氏、高安氏などが使用しました。
10大家紋には何がある?
日本には、実に25,000以上の家紋があると言われていますが、中でもよく使用されている家紋を「日本10大家紋」と呼んでいます。
そのうち、 【藤・桐・鷹の羽・木瓜・片喰】を5大家紋と呼び、【蔦、茗荷、沢瀉、橘、柏】を加えて10大家紋と呼びます。10大家紋の解説をまとめましたので時間のある方は是非チェックしてください!
藤紋 | 桐紋 | 柏紋 | 蔦紋 | 沢瀉紋 |
茗荷紋 | 鷹の羽紋 | 橘紋 | 片喰紋 | 木瓜紋 |
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「万葉集」「枕草子」にも登場する蔦
蔦は日本に古くから存在する植物で、「万葉集」「枕草子」の中でもその存在が描かれています。
石、木、壁といったところを這うように葉を茂らせること、紅葉になると赤やオレンジの色に染まり、人々の目を楽しめたことから、とても大事にされてきた植物なのです。
その美しさと、這って上に上がろうとする逞しさ・葉を多い繁らせることが「子孫繁栄」を連想させ、家紋として使用されるようになったと言われています。
「蔦」の文字の意味
「蔦」の文字にも、とても美しい意味があります。草冠は「草」で大地を、その下にある「鳥」は空を表し、大地と空を意味しているとか。
蔦は地面から生えるものですが、どんどん弦を延ばして上へ空へと昇っていきます。その様子が、そのまま漢字として使われるようになったと言われているそうです。
徳川8代将軍・吉宗も蔦を愛していました
徳川家・8代将軍の吉宗も、蔦をとても愛していたと言われています。吉宗は、自分がいなくなった後に自らの血が絶えることを心配し、「一橋(ひとつばし)」「田安」「清水」という三つの家をたてました。この三つの家も徳川家なので「葵紋」を使用していますが、裏紋は「蔦紋」です。
ちなみに、このうちの「徳川一橋家」の子孫が、徳川家最後の将軍となる徳川慶喜です。吉宗が使用したことで、蔦紋は「葵紋」につぐ権力の象徴として扱われるようになりました。
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蔦紋が広まった理由とは?
徳川幕府使用していた「葵紋」は、権威の象徴であったために「徳川家以外の者は使ってはいけない」と定められていました(一部例外あり)。
しかし、蔦紋はそれがなかったために庶民でも気軽に使うことができたのです。吉宗が愛した蔦紋にあやかろうと、多くの人がこの蔦紋を使用したために、蔦紋は使用する家も特に多くなりました。
蔦紋が10大家紋と言われ、今でも使用している家が多いのは、かつての徳川家の権威を伝えるものでもあるのです。
蔦紋の種類
蔦紋
蔦紋の基本になる家紋がこちら。
そして、蔦紋の中で一番有名なのもこの家紋。
大人気の戦国武将・松永久秀が使っているのがこの家紋ですし、同じくらい知名度のある武将・藤堂高虎が使用しているのもこの家紋です。
また、徳川家8代将軍の吉宗がつくった「御三卿」の裏紋として使わせたのもこの紋だったため、蔦紋と言えばこの家紋というイメージが強いです。
丸に蔦紋
蔦紋を丸で囲んだデザインの家紋です。
新選組で活躍した藤堂平助が使用していた家紋ですね。
日本海軍の東郷平八郎の家紋も、この「丸に蔦紋」です。
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向かい蔦菱
蔦紋がひし形にアレンジしたもの。
二枚の蔦の葉が向き合っている様なデザインになっています。ひし形になるだけで、どこか荘厳さが出てくるような気がしませんか?
枝蔦紋
蔦紋は蔦の葉だけを表すものが多いのですが、こちらは蔦の枝まで描いている家紋です。
蔦の枝まで描くことで、蔦が上に伸びて葉を茂らせている様子が分かりやすくなっていますね。蔦の紋の中でも、優雅さが感じられるもののひとつです。
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枝蔦丸
こちらも、とても優雅なデザインの家紋。蔦の枝が丸く葉を囲んでいるように見えます。
蔦の葉の美しさを描き出している家紋で、当時の人が蔦を「美しい」といって愛していた理由が良く解ります。
三つ組合わせ蔦
蔦の葉を三つ組み合わせたデザインの家紋ですが、一見すると蔦とは解らないデザインです。
家紋は、進化していくうちにもとのデザインとはまったく違ったデザインになることも多く、この家紋はまさにそれでしょう。
花が重なっているようにも見えます。
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蔦紋まとめ一覧
蔦 | 丸に蔦 | 糸輪に蔦 | 丸に三つ盛り蔦 | 石持ち地抜き蔦 |
糸輪に陰蔦 | 丸に頭合わせ三つ蔦 | 藤輪に蔦 | 蔦菱 | 中陰蔦 |
中陰変わり光琳蔦 | 中陰鬼蔦 | 五瓜に蔦 | 三つ割り蔦 | 丸に六つ蔦の花 |
亀甲に蔦 | 中陰松皮菱に蔦 | 浮線蔦 | 割り蔦 | 井桁に蔦 |
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蔦紋を使っている戦国武将・有名人
松永久秀
戦国時代の大名。
織田信長が「普通の人間なら一つもできないことを、三つもやった」というほど、凄まじい逸話を残した武将です。
- 一つ目→主の暗殺
- 二つ目→将軍暗殺(足利13代将軍・足利義輝を暗殺)
- 三つ目→東大寺の大仏を燃やした
信長もかなり破天荒な人物ですが、それに勝るとも劣らないキャラの武将です…。しかも、あの信長を裏切って一度目は赦され、二度目も「茶器をくれれば赦す」とまで言われています。
あまりの破天荒さに、信長も死なせるのはもったいないと思ったのでしょうか。さらに死に方も壮絶。信長に反抗して破れ、「茶器をくれたら赦してやる」と言われたものの、それに応じることなく茶器に爆薬を詰め、自爆でこの世を去りました。
この強烈なキャラから現代でも人気があり、BASARAなどの人気ゲームにも登場しています(そして自爆キャラ)。ゲームでもトンデモキャラとして描かれることが多いのですが、史実を見てもそん色ないのがスゴイ…。
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藤堂高虎
浅井長政の家臣から、豊臣秀吉の弟・豊臣秀長に仕えた武将です。
豊臣恩顧の武将ながら、関ヶ原の戦いでは徳川家康についたことで良く知られていますね。
「関ヶ原の戦い」では、家康の最大の敵であった大谷吉継軍と戦って見事に撃破。この功績が認められ、家康に伊勢・津の24万石をもらっています。
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高虎は農民同然の家で生まれたため、最初に仕えた浅井家・その次に仕えた家でもうまくいかなかったようです。その後も仕える家を転々としていることから、身分がネックになったのかもしれません。
しかし、同じ農民出身だった秀吉の弟・秀長とは意気投合するところがあったのか、秀長が死ぬまで仕えています。秀長は、高虎が活躍すればきちんと恩賞をあたえ、能力もちゃんと評価していたため、高虎は「やっと自分の力を認めてくれる武将に会えた」と思ったのでしょう。1600年 関ケ原の戦いで見る戦国武将の家紋
新選組隊士・藤堂平助は高虎の藤堂家のご落胤と名乗っていたようですが、今は「違うのでは」という説が強いみたいですね。
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徳川吉宗
徳川家8代将軍。
自分の血筋が途絶えることを心配した吉宗が、自らの子供らを立てて「一橋」「田安」「清水」の家を作り、紋として蔦紋を使用させました。
吉宗はとても蔦を愛していたそうで、そこから蔦を使うに至ったのでしょう。
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藤堂平助
幕末に京都で活躍した「新選組」の隊士。八番隊組長としても活躍しました。江戸にいた近藤勇と一緒「浪士組」として上京した後、新選組を結成し近藤に忠誠を尽くしますが、途中で合流した「伊東甲子太郎(いとうかしたろう)」と共に新選組を抜け「御陵護士」になります。
しかし、伊藤と新選組の関係が悪化すると、新選組は伊東を暗殺。その遺体をとりに来た他の隊士たちも殺害し、その中に平助もいました。
近藤は「平助だけは逃がしてやれ」と命じていて、現場にいた永倉も逃がそうとしたようですが、それを知らない味方が殺してしまったようです。このころから、新選組の転落がはじまります…。
家紋は「丸に蔦紋」
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谷崎潤一郎
日本を代表する文豪。
「痴人の愛」がとくに有名で、「ナオミ」という若い女性の世話をしてやるつもりで引き取るものの、最後はナオミに支配されいうがままに生活をするという男の破滅を描きました。
現代でも人気がある小説家の一人です。
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まとめ
蔦そのものの蔦紋。8代将軍吉宗も使用したりバリエーションがすごく豊富なのがこの家紋の特徴です。世間にも広がりを見せているので、職場やクラスの中に一人くらいは柏紋を使っている方もいるはずです。ぜひチェックしてみてください。
家紋についてもっと知りたい、という方は下の画像に戦国武将の家紋を一覧できるリンクや戦国武将の合戦の記事のリンクを張っておりますのでご興味ある方はぜひご覧ください。
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