室大墓古墳は、奈良県の葛城地方最大の古墳で、全国第18位という大きさを誇る古墳です。
この古墳には珍しい長持形石棺があり、竪穴式石室のなかに実際に入っていくことができるのも大きな特徴です。
家型埴輪や朝鮮半島からきた船形陶質土器など珍しい出土品も多数発見されている、室大墓古墳をいっしょにみていきましょう。
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目次
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室大墓古墳とは
室大墓古墳は、奈良県御所市にある前方後円墳で、国の史跡にも指定されています。
室大墓古墳は、「室宮山古墳(むろみややまこふん)」とも呼ばれます。
墳丘長は、238mで、葛城地方では最大の古墳で、全国でも第18位の規模の大きさを誇る古墳です。
葛城地方では、古墳時代前期にはこのような大型の古墳は造られておらず、中期に入って突如として室大墓古墳が現れます。
奈良盆地の南西にある御所市中央の丘陵の先端を切断して築造された古墳で、墳丘は3段築造で、くびれ部には造出しが存在します。
古墳表面には、花崗岩の割石を使った葺石が敷かれ、古墳の周囲には盾形周濠が巡らされています。
周濠には、堤に乗るようにして、陪塚であるネコ塚古墳があります。
室大墓古墳の埋葬施設は、前方部に2か所、後円部に2か所、左右の張り出し部に各1か所ずつの計6か所あります。
後円部の2か所の埋葬施設には、竪穴式石室には王墓に特有の棺であるため、「王者の石棺」とも呼ばれる長持形石棺があり、室大墓古墳の棺は全国的にみても大規模なものになります。
石棺は、凝灰岩製の竜山石(兵庫県加古川流域産)による組合式で、蓋には珍しい格子亀甲文が描かれています。
被葬者は東枕となっているため、石棺を据えてから石室が造られたと考えられています。
室大墓古墳の被葬者は?
引用:ja.wikipedia.org
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室大墓古墳の実際の被葬者については、はっきりとはわかっていませんが、武内宿禰(たけしうちのすくね)の墓といわれています。
武内宿禰は、古代日本の人物で、『日本書紀』や『古事記』などに登場し、第12代景行天皇から第16代仁徳天皇までの5代にわたって天皇に仕えたといわれる伝説上の忠臣です。
しかし、武内宿禰は7世紀頃に創作された人物で、史実にはいなかったと考えられています。
近年では、別に葛城襲津彦(かずらきのそつひこ)の墓とする説が有力視されています。
葛城襲津彦も記紀に登場する古代日本の人物で、武内宿禰の息子とされています。
第16代履中天皇、第17代反正天皇、第18代允恭天皇の外祖父とされる人物です。
こちらも武内宿禰と同じく創作性の高い人物ですが、似た名前の人物が朝鮮半島に派遣されたという記録があることから、実在のモデルがいたと考えられ、室大墓古墳はその人物の墓ではないかとみられています。
古墳から出土した朝鮮半島産の船形陶質土器から、この古墳の被葬者が朝鮮半島と深いつながりをもっていたとみられ、この点でも、葛城襲津彦の可能性が高くなっています。
南石室で竪穴式石室を見学しよう
引用:http://blog.livedoor.jp/
室大墓古墳の後円部にある南石室は、昭和25年に盗掘を受け、それをきっかけにして調査が行われています。
そのため、現在も南石室は、一般に公開されていて、実際に中に入ってみることができます。
中は狭いですが、竪穴式石室が見学できる古墳は全国的にも珍しく、長持形石棺をみることのできる竪穴式石室となると、この室大墓古墳が日本唯一になります。
ぜひ懐中電灯を用意して入ってみましょう。
室大墓古墳の基本情報
読み | むろのおおはか(むろのおおばか)こふん |
所在地 | 奈良 |
住所 | 奈良県御所市大字室 |
地域 | 関西 |
形状 | 前方後円墳 |
大きさ | 238m |
被葬者 | 葛城襲津彦または武内宿禰 |
時代 | 5世紀初頭 |
作られた時期 | 古墳時代中期 |
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出土品
●南石室
室大墓古墳では、南石室から甲冑形埴輪(冑は革製)、靫形埴輪、盾形埴輪など高さ1.5mほどの形象埴輪40ほどからなる武器形埴輪列や、円筒埴輪、朝顔形埴輪、大型の家型埴輪などが見つかっています。
武器形埴輪列は、正面を外側に向けて配置され、これには被葬者を外敵から守るという意味があります。
大型の家型埴輪は、室大墓古墳の南にある豪族政庁跡とされる極楽寺ヒビキ遺跡にある大型掘立柱建物跡と柱の形状が一致していて、これがモデルと考えられ、埴輪と実際の遺跡の遺構が一致するというとても珍しいケースです。
甲冑が鉄ではなく革でできているのは、被葬者を守護する親衛隊の象徴と見られています.
●北石室
北石室では、朝鮮半島南部の伽耶産の陶質土器が見つかっていて、その中でも注目されているのが精緻な船形陶質土器でこうした土器が副葬品とされるのは他に例がなく、一般的な日本の須恵器と色調が異なることから、朝鮮半島からの伝来品ともいわれます。
ほかにも、前方部からは明治時代に開墾に伴って大量の副葬品が出土しており、絵模様神獣鏡、三角縁神獣鏡、獣首鏡といった鏡類、滑石製勾玉、管玉、棗玉、玻璃玉など170個以上の玉類、石製刀子のような石製品などが見つかっています。木製棺の一部とみられる高野槙製の板材も出土していることから、複数の棺があった可能性もあります。
●その他
北の張り出し部では、革製冑とみられる漆塗製品、鉄鏃、短甲片、鉄刀片などが見つかっていて、革製品が出たことから、ここには被葬者の親衛隊長が埋葬されているのではと推測されています。
石室上の封土からは刀子、斧頭など滑石製の石製模造品、土師器片、鉄剣などが見つかっています。
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室大墓古墳の展示館へ行こう
引用:www.jalan.net
概要
奈良県立橿原考古学博物館は、奈良県内の遺跡や古墳の考古学研究を行っている奈良県立橿原考古学研究所の付属施設です。
ここでは、研究成果や遺跡・古墳から発掘された土器・埴輪といった様々な出土品が展示されています。
奈良県立橿原考古学研究所は、公的な埋蔵文化財研究施設としては、日本で最も古い歴史をもった施設です。
ここへいけば、かつてヤマト王権の中心地として日本史における重要な地位を占めていた奈良の古代史についてより深く知ることができます。
見どころ
奈良県立橿原考古学博物館では、奈良県内の古墳・遺跡から発見された土器・埴輪など、様々な遺物が展示されています。
ここでは、室大墓古墳から出土した大型家型埴輪をはじめとする各種埴輪や、副葬品も展示されています。
ほかに、旧石器時代から室町時代に至るまでの、食器や装飾品、狩猟用具といった発掘品や当時の建物の復元模型など豊富な内容の展示が行われています。
常設展示のほかに、春と秋に2回特別展があり、夏には発掘調査の速報展「大和を掘る」も開催されています。
住所 | 奈良県橿原市畝傍町50-2 |
お問い合わせ | 0744-24-1185 |
開館時間 | 午前9:00~午後5:00 |
休館日 | 月曜日 年末年始(12月28日~1月4日) |
観覧料 | 大人400円 学生(大・高校生)300円 小人(中・小学生)200円 ※映像ライブラリー、情報コーナー、休憩室などは無料で利用できます。 |
アクセス | 近鉄「橿原神宮前駅」下車 徒歩約15分 |
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室大墓古墳周辺のおすすめスポット
見どころ1 厳島神社
引用:www.city.gose.nara.jp
安芸の宮島といわれる広島県の厳島神社を総本山とする厳島神社は全国各地に500社以上あるといわれ、室大墓古墳と同じ御所市にある厳島神社もその1つです。
ここでは、日本神話に登場する女神・市杵島姫命(イチキシマヒメ)を祀っています。
市杵島姫命は、七福神の1人である弁才天と同一視されることもあり、地元の人からは「弁天さん」と呼ばれて親しまれてきました。
住所 | 奈良県御所市大字原谷6 |
アクセス | JR和歌山線「掖上駅」から徒歩約7分 |
見どころ2 中村家住宅
引用:japan-geographic.tv
かつて南北に走る名柄街道と東西に走る水越街道の交差点であったこの場所には、今も大奥の古民家が残っています。
中村家住宅もその1つで、江戸時代の慶長年間に建てられた代官の家で、切妻段造、本瓦葺、六間取という豪邸です。
住所 | 奈良県御所市名柄339 |
アクセス | 近鉄「御所駅」から名柄行きバスで終点下車 徒歩約3分 |
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室大墓古墳へのアクセス
車
第二京阪道路「葛城IC」から約1時間
電車
近鉄電車「近鉄御所駅」から徒歩約38分
バス
ひまわり号・西コース「室東口」下車 徒歩約6分
室大墓古墳周辺のランチおすすめ3選
わだきん
室大墓古墳の近くにある人気の洋食店。
メンチカツやシーフードフライなど毎日変わる日替わりランチは1380円となっていて、ほかにも、ハンバーグやポークカツ、エビフライなどランチメニューが充実。
骨付きウインナー、エビフライ、フライドチキンがセットになった「わだきん(1380円)」もあります。
住所 | 奈良県御所市宮戸110 |
お問い合わせ | 0745-66-1511 |
営業時間 | 平日・祝日 11:00~16:00 土日 11:00~19:00 |
定休日 | 月曜・火曜 |
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食事処かもきみ
室大墓古墳の南にある温泉「かもきみの湯」の中にあるレストランです。
ランチには820円からの定食メニューがあり、なにより、食事と温泉がセットで楽しめるところがオススメです。
住所 | 奈良県御所市五百家333 |
お問い合わせ | 0745-66-2617 |
営業時間 | 11:00~23:00(L.O.22:30) |
かふぇ道
室大墓古墳の近くにあるいろいろなカレーが食べられる喫茶店。
カレーはどれも700円で、ルーには玉ねぎがたっぷりと入っています。
ほかに、おまかせランチセット(1000円)もあります。
住所 | 奈良県御所市室187-2 |
お問い合わせ | 0745-65-0660 |
営業時間 | 7:00~17:00 |
定休日 | 月曜日 |
まとめ
室大墓古墳は、この地方では最大となる古墳で、全国第18位という大きさを誇ります。
たくさんの埋葬施設があり、様々な副葬品が見つかっているのも大きな特徴で、中でも朝鮮半島からきた船形陶質土器は、ぜひ博物館で実物を見学してみましょう。
室大墓古墳は、実際に内部に入って石棺を見ることができる全国でも希少な古墳です。
あなたも古墳のなかに足を踏み入れて、遥か昔にこの地に葬られた人々に思いを馳せてみてはいかがですか。
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