【家紋】女紋とは?加賀紋・伊達紋も解説!現代で冠婚葬祭の着物にも使用する

「家紋」はその家を表現する「顔」のようなもので代々受け継がれていくものですが、その家紋とは別に女性が使用した「女紋(おんなもん)」という家紋が存在することをご存知でしょうか?

女性のみが持っていたもので、デザインも一般的な家紋とは異なるものなのです。どのようなものだったのでしょうか?

今回は、「女紋」と呼ばれる女性限定の家紋のルーツや、そのバリエーションについてご紹介いたします。

女紋とは?女性のみが使う紋

家紋」はよく聞きますが「女紋」を初めて聞いた方も多いのではないでしょうか。女紋は名前の通り女性が使用していた家紋のことで、非公式なものでした。

特に関西地方を中心とする西日本エリアで見られる風習で、一般的な家の家紋とは別に女性が自分の紋として持っていたものです。

「家紋」の始まりは衣服や調度品などに使用していた文様を家の印として使い始めたことですが、「女紋」はどのような出来事をきっかけにして誕生した文化だったのでしょうか?そのルーツについて解説します。

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娘を嫁がせるために使ったのがルーツ

現代での「結婚・婚姻」は、働き方や生活習慣の変化により「嫁ぐ」というような硬いものではなくなっていますが、かつては女性は若くして男性の家に嫁ぐ、嫁に行く、家に入るといった文化でした。

女紋の始まりは、武家の家に娘を嫁がせる際に生家の家紋を持たせたことと言われています。母親が代々娘に継承していくというスタイルだったのです。

どの家紋が女紋かは不明

しかし、女紋はどの家紋を指すのかは不明となっています。というのも、正式な家紋と違い女紋は非公式な習慣であるため、どの家紋を指すのかは特に決まっていないのです。

その家の替紋(定紋ではないサブ家紋のようなもの)が、そのまま女紋として代々伝わっているということもあるので、「これが女紋」という決まったものはないのです。

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女紋のバリエーション

女紋にもバリエーションがあるのですが、女性が使用していたため柔らかい印象の紋が多かったようです。かつてから女性は優しいデザインのものを好む風習があったのですね。

では、どのように柔らかい印象の家紋ができていったのでしょうか?

本家の家紋を柔らかく変更した

女紋は、本家の家紋を元として柔らかくなるようにデザインを変更していったことがわかっています。

武士が使用していた一般的な家紋は、武士の嗜好により力強いもの、権威を表すものが多かったため、女性らしく優しい形へと変形されました。

花菱

花菱

例えば、「剣花菱」は強い印象のある剣が取り除かれ、シンプルな「花菱」へと変形されました。剣を取ることで柔らかい印象になりますね。

太輪

細輪

また、輪紋の中で「太輪」を使用したところを華奢な印象の「細輪」に変更するといったこともありました。

このように、女紋へはモチーフの一部を取ったり、同じ紋の中でも優しいデザインのものへ変更しながら活用されていたのです。

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母から譲りうけた紋を使用した

また、母が娘に代々同じ女紋を受け継いでいったこともわかっています。嫁に行く際に母が女紋として使用していた紋を娘が受け継ぎ、嫁ぎ先で誕生した子どもが更に受け継いだというパターンです。

江戸時代中期に[加賀紋][伊達紋]として女性の家紋が流行

母から継承したり、家紋を変形させたりして使用されていた女紋ですが、江戸時代の中期頃になると「加賀紋」「伊達紋」が女性の間で人気となります。

それぞれの紋には、このような特徴がありました。

  • 加賀紋…装飾用の紋として考案されたカラフルなもの
  • 伊達紋…これまでにないデザインで小洒落ていたもの

硬くて強い印象の家紋が一般的だった中、女性たちにとってこれらの家紋は最新的でお洒落なものだったのです。

それぞれそのような紋であったのか見てみましょう。

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カラフルな加賀紋

引用:加賀紋の系譜

こちらは菊をメインとした紋で、船の中に沢山の花が散りばめられています。通常の家紋とは異なり、とても華やかでカラフルな紋です。

加賀紋は何色もの色を使用して描くことが特徴で、この豪華さと可愛さが女性の心を掴んでいたのです。

芸妓や遊女がつかった伊達紋

引用:コトバンク

カラフルな加賀紋に対し、「伊達紋」は芸妓や遊女に好まれていた小洒落た紋でした。色使いに落ち着きがあり、加賀紋ほどの華やかさはありませんが綺麗で優雅な印象です。

加賀紋・伊達紋はどちらも江戸時代にブームとなっていた女性専用の綺麗な紋だったのです。

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現代では女性も冠婚葬祭時の礼装で家紋を使う

現代の結婚式ではウエディングドレスを着る方の割合の方がはるかに多いですが、現在でも白無垢を着る際には家紋を入れたものを着る文化が残っています。

家紋を入れる場所はいくつかあり、白無垢の場合、背中・袖後ろ・肩の前と決まっています。家紋をしっかり受け継いでいる家はなかなか多くはありませんが、現代でもゼロではないのです。

また、白無垢に限らず、冠婚葬祭あらゆる場での礼装に家紋が用いられています。

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まとめ

通常の家紋とは別に女性が使用していた「女紋」についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

加賀紋や伊達紋など優美でカラフルな紋が登場した際の興味関心は、女性であればきっとわかるのではないでしょうか。

自分だけの家紋として母から受け継いだり、優しい印象になるよう変形させて用いていたというのは面白いですよね。通常の家紋も面白いですが、こういったもう一つの家紋について調べてみるのもおすすめですよ。

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